保護者への提言

【親御さん、信じてください】トレセン不合格は「全く問題ない」。育成専門コーチが伝える選考会のリアル

「トレセンに落ちてしまった。うちの子には才能がないのかもしれない……」

選考結果の通知を見て、親子で肩を落としている方も多いでしょう。しかし、15年間ジュニアユースの現場で、身体の小さな選手や足の遅い選手が、後にJリーガーや強豪校の主力へと化ける姿を見てきた私から言わせれば、「トレセン不合格」は、決して才能の否定ではありません。

なぜ、そう断言できるのか。

今回は、トレセンスタッフも務める私の視点から、「トレセンの存在意義」と「合格する選手の条件」という建前(正論)を整理した上で、現場で起きている「選考会の残酷なリアル」を包み隠さずお話しします。

そもそも、なぜ「トレセン」は存在するのか?

トレセン(トレーニングセンター)制度の最大の目的は、一言で言えば「日本サッカー全体のレベルアップと、個の育成」です。

1. 有望なタレントの早期発見(スカウティング)

ナショナルトレセンを頂点とするピラミッド構造を作り、地域に眠っている優秀な選手を早い段階でリストアップし、一貫した指導カリキュラムに乗せるためです。

2. 基準(スタンダード)の共有

「今、世界で戦うために必要な強度はどれくらいか?」という基準を、選手と地域の指導者に肌で感じてもらう場でもあります。

3. 質の高い環境での刺激

自チームでは物足りないトップ層を集め、高いレベルで競い合わせることで、さらなる成長を促す「化学反応」を期待しています。

トレセンに合格するのは「どんな選手」か?

選考会という限られた時間の中で、スタッフが「合格」の判を押さざるを得ない選手には、共通する3つの特徴があります。

圧倒的な「個」の打開力

一瞬で相手を抜き去るスピードや、強引にシュートまで持っていくパワー。これらは誰の目にも明らかな「武器」であり、高い評価に直結します。

プレーの強度(インテンシティ)が高い

切り替えの速さ、球際の激しさ。現代サッカーにおいて「戦えること」は、技術以前の前提条件として重視されます。

ミスが少なく、連続してプレーできる

プレッシャー下でも正確にボールを「止める・蹴る」ことができ、攻守にわたって絶えず試合に関わり続けられる選手は、スタッフに安心感を与えます。

「今の時点で、最も完成度が高く、計算できる選手」。これがトレセンに合格する選手の正体です。

しかし、ここからが「現場のリアル」です

ここまでの話を聞くと、「やっぱり能力の高い子が受かるんだ」と思うかもしれません。しかし、私が選考会の現場で見てきた現実は、それほど単純ではありません。

「合格基準に合致しているはずなのに、なぜか見落とされる才能」があるのです。ここからは、私が実際に体験した選考会の裏側をお話しします。

上記のようにトレセンという建前があることは理解してください。トレセンという仕組みが「悪」であるということではありません。合格の選考基準はこれが必然であり自然です。だからこそ上手に向き合って、合格・不合格に振り回されず大好きなサッカーと向き合ってください。

評価の目」によって結果は180度変わる

選考会では複数のスタッフが評価しますが、実は「どこを見ているか」はバラバラだったりします。

以前、ある選考会で私は、非常にバランス感覚に優れたサイドバック(SB)の選手に高い評価を私はつけました。彼は常に周りを見て、SBながら声を出し、ラインコントロールをしてチームを統率していました。

しかし、他のスタッフの評価シートには彼の名前はありませんでした。「なぜ評価しないのか」と聞くと、返ってきたのは「え、そんな動きしてた? 全然気づかなかった」という言葉でした。

結局、その選手はDFの合格枠が空いていたため滑り込みで合格しましたが、評価者の基準一つで、こうした「知性」は簡単に見落とされてしまうのです。

「合格した選手」を引き立てた、名もなき名選手たち

中学2年の選考会で、唯一「新規合格」を勝ち取ったMFがいました。彼はボールに多く絡み、目立っていました。しかし、そこにはある「カラクリ」があったのです。

実は、彼のチームの中盤には、私が指導している「オフの動き(駆け引き)」を理解している選手が2名いました。彼らは自分がパスをもらうだけでなく、味方がフリーになるためのスペースを意図的に作っていました。

新規合格した彼は、その選手たちが作ったスペースを無自覚に使って目立っていただけ。

一方で、スペースを作り、周りを活かした「本当に賢い2人」には、私以外の票は1票も入りませんでした。

目立つ選手が合格し、それを支える本質的な選手が落ちる。これが短時間の選考会で起きる残酷なリアルです。

「強豪の看板」と「入れ替え」のリスク

トレセンには実力以外のバイアスも影響します。地域ブロック(九州・四国・北信越など9つのエリア)リーグのような高いレベルで戦っているチームの選手は、レベルの高い試合を普段からやっている環境でもありますし、スタッフも普段から目にしているため、優先的に選ばれやすいのが現実です。トレセン自体の活動もさほど多くないので仕方ないとも言えます。

また、私の息子が小6で初めてトレセン受けた時ですが、そこまで悪くなかったですが、特別な存在感は示せませんでした。既存のメンバーと新しく受ける選手が「同じくらいのレベル」であれば、精神的なショックも考慮して既存の選手を優先する心理が働きます。一度決まった枠をこじ開けるには、圧倒的な差を見せつけない限り難しいのです。

「偽物の落ち着き」と「強豪ではないチームに眠る賢さ」

強豪チームの主力で「ゲームを落ち着かせている」と評価される選手でも、指導者の目で見ると「プレーの意図」が感じられないケース多々があります。周りが優秀だから上手くいっているだけ、というパターンです。

逆に、強豪ではないチームの選手ほど、フィジカルや環境に恵まれない分、「どうすれば生き残れるか」と必死に頭を使い、面白いアイデアを持っていることが多い。私はこうした「賢い選手」こそ、将来伸びると確信しています。

まとめ:成長の「順番」が違うだけ

トレセンに受かる・落ちるというのは、能力の有無ではなく、単に「成長の順番」の違いだと考えることをオススメします。

先行逃げ切り型: 身体成長が早く、今評価される。だが後から「知性」をつけないと、高校以降で必ず壁にぶつかる。

逆転爆発型: 身体が遅い間に「知性・駆け引き」を極める。フィジカルが追いついたとき、エリートを抜き去る。

もし、身体能力があるのに落ちたのであれば、それは自分の武器を理解できていない証拠。自分を見つめ直す最高のチャンスです。

もし、身体が小さくて落ちたのであれば、そのまま「賢さ」を磨き続けてください。

私は、こうした「今はまだ光っていないけれど、本物の知性を持つ選手」を、高校で輝かせるために鍛えています。今の結果に左右される必要はありません。サッカーを楽しみ、牙を研ぎ続けましょう。その努力を、私は、そして本物の指導者は必ず見ています。

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