「足が速ければ。もっと体格に恵まれていれば……」
ジュニアユース年代で、身体能力の差に絶望している選手や親御さんを、私は15年の現場で数え切れないほど見てきました。セレクションに落ち、Bチームに甘んじ、スピードスターに置き去りにされる日々。
しかし、断言します。
その「足の遅さ」や「非力さ」は、将来エリートたちを追い抜くための最強のギフトになります。
なぜなら、身体能力に頼れない環境こそが、サッカーにおいて最も価値のある「知性(インテリジェンス)」を育てるからです。
今回は、私が実際に指導した、チームで一番足が遅く小柄だった選手が、いかにしてチームの「心臓(司令塔)」へと登り詰めたのか。その「逆襲のロジック」を公開します。
この記事を読み終える頃、あなたにとって「身体の不利」は、克服すべき課題ではなく、勝つための「武器」に変わっているはずです。
「足が速い子」には中々たどり着けない、予測というショートカット
50メートル走のタイムを1秒縮めるには、血の滲むような努力と時間が必要です。しかし、相手の動きを「1秒早く予測」し、3メートル先回りすることは、今日からの意識次第で可能です。
私がかつて指導したある選手は、チームで一番足が遅く、体も小さい選手でした。セレクションでは真っ先に落とされるタイプです。しかし、彼は中学3年の大事な時期には「心臓(司令塔)」へと変貌しました。
彼が徹底したのは、「遠くを観て、近くを間接視野に置く」こと。
足元ばかり見る選手は、バタバタすることが多く、相手のプレスにパニックを起こします。しかし、彼は常にピッチの遠く(相手のゴール)を捉えていました。遠くが見えているから、近くの敵は勝手に視界に入ってくる。この「余裕」こそが、ゲームを落ち着かせ、相手のスピードを無力化する武器になったのです。
相手を「困らせる」技術。ボールに触りすぎない勇気が、落ち着いた時間を創る
多くの選手が「ボールを持って相手が奪いに来ると、ボールを奪われないために逃げなきゃ」と焦り、横にドリブルを始めてしまいます。しかし、それは相手にとって一番対応しやすい「餌」でしかありません。
「チームの心臓」になったその子は、極力横に逃げず、ボールを触りすぎませんでした。
触れば触るほど、視野は狭まり、選択肢は消えていく。彼は最小限のタッチで、常に「前向き」でボールを受けることに命を懸けていました。
• 相手がマークしにくい「ゲートの中央」に立つ。
• 前向きでフリーの味方へ、最速でパスを届ける。
遠くを観て、近くを間接視野に入れながらボールを扱う技術
後ろを向いてキープすれば、相手はここぞとばかり距離を詰め、時に激しく接触しボールを奪いに来ます。そこで、彼は「前を向いて相手をコントロールする」技術を極めたのです。前を向いた瞬間に複数の選択肢を持つ彼を前に、相手DFは「飛び込めない」という迷いの中に閉じ込められました。
サイバーステーションでは、1年生は必ずトレーニングの最初に『コーディネーショントレーニング』入れています。
最大の目的は、遠くを見て、近くは間接視野に入れながら、冷静に落ち着いてプレーをできるようになってもらうためです。サッカーボールを時限爆弾のように扱わないようにし、すべての選手が、自分の目で見て、『これだ』『ここだ』という自分の思考で判断し実行できるように日々精進してもらっています。
コーディネーショントレーニングトレーニングは、元興国高校で今は奈良クラブでユースコーチ兼テクニカルダイレクターの内野さんがやられているトレーニングを参考に、少しアレンジを加えてやっています。このトレーニングを入れてから、明らかに過去のやっていなかった選手たちと違いがでてきました。
- 混戦でのボール保持
- ボールコントロールの質(浮き球も含める)
- 相手と距離を保ちながら落ち着いて周りを見ながらボールを扱う
などなど効果は絶大です。
身体能力に頼らない「知性」は、一生裏切らない
「足が遅い」「非力が悩み」という言葉をよく耳にします。しかし、それは裏を返せば、身体能力に頼らずに生き残るための「最高の環境」にいるということです。
• 遠くを観ることで、パニックを消す。
• ボールを触りすぎず、前向きの選択肢で相手を支配する。
• 「ゲート」を見極め、相手が判断に迷う立ち位置を維持(維持しょうと)し続ける。
今回紹介したモデル選手は、中学1年の時は目立たない「繋ぎ役」でした。しかし、数年でフィジカルが追いついたとき、彼の磨き抜かれた「予測」と「判断」は、誰にも真似できない圧倒的な武器となりました。
今、フィジカル差に苦しんでいる君へ。
その遅さは、君を「賢い選手」へと導くギフトです。逆襲の準備は、もう始まっています。