「もっと、あそこで寄せていれば……」
「なんでうちの子は、あんなに足が遅いんだろう」
試合後の車内、疲れ果てた我が子の隣で、つい「反省会」を始めてしまっていませんか?
そのお気持ち、痛いほど分かります。私自身も4児の父。我が子がピッチで苦戦している姿を見て、冷静でいろと言う方が無理かもしれません。
親御さんの「良かれと思った一言」が、実は子供の才能に蓋をしていることが多々あります。
しかし、15年間、数々の【晩成型の逆襲】を支えてきた指導者として、これだけは断言させてください。
今回は、身体能力に恵まれない子が「化ける」ために、親が今日から捨てるべき3つの執着について、現場の事実に基づきお話しします。
「今、勝つこと」の執着を捨てる。J下部組織が隠し持つ「3年間の長期戦略」
強豪チームの多くは、常に「勝利」という結果を求められます。負ければ批判され、結果が出なければ選手も入れ替わる。そんな環境では、どうしても目先の結果を優先し、身体能力に頼った「勝てるサッカー」を選ばざるを得ない現実があります。
しかし、私が15年の現場で見てきたJリーグの下部組織(アカデミー)は、全く違う時間軸で動いています。
彼らは中学1年生の時、あえて「結果」を二の次にします。徹底的に行うのは、リスクを承知で後ろからボールを繋ぐ「ビルドアップ」の経験。ミスをして失点しても、将来のために知性を磨く時間を優先するのです。2、3年で一度結果を重視する時期を挟み、高校生(ユース)になると、再び高度なビルドアップのトレーニングへと戻ります。
つまり、エリート教育の現場ですら、中1のスコアなんて「通過点」に過ぎないと考えているのです。
親御さんに問いたい。目の前の一勝に一喜一憂し、お子さんの将来の「伸び代」を削っていませんか?
「スピードとパワー」の執着を捨てる。弱者が強者を飲み込む「非対称の戦い」
足の速い子に、足の速さで挑む。身体の大きな子に、パワーで挑む。
これは、相手の土俵で相撲を取っているのと同じです。晩成型の少年がその土俵に乗れば、結果は見えています。相手はさらに上のスピード、さらに上のパワーで叩き潰しにくるからです。
晩成型の逆襲において、最も大事なのは「いかにスピードとパワーに頼らずにプレーできるか」です。
相手が時速30kmで走るなら、こちらは「予測」で3メートル先回りすればいい。相手がパワーで押してくるなら、その力を利用して「逆」を取ればいい。身体能力に頼れない今の環境は、実は「知性」を磨くための最高のギフトなのです。
「うちの子、足が遅いから……」と嘆く必要はありません。その遅さがあるからこそ、あの子は生き残るために「頭」を使い始めているのです。
「正解」を教える執着を捨てる。親の役目は「答え合わせ」ではない
サッカーに唯一の「正解」はありません。状況に応じた選択肢は常に複数あり、その中から「ベター」を瞬時に選び続けるスポーツです。
一番やってはいけないのは、試合後の車内で「あそこはパスだろ!」と正解を押し付けること。それを繰り返された子供は、ピッチの上で親の顔色を伺い、自分で考えられない「指示待ち人間」になってしまいます。
もし、明らかに状況に合っていない判断をしたなら、指導者の出番です。私たちは「なぜそれを選んだのか?」という理由を添えて、本人が見て、考え、判断できる「材料」を与えます。
親御さんの役目は、教官になることではありません。
子供がピッチで堂々と間違いを犯し、そこから学べる「チャレンジできる環境」を整えること。4児の父である私も、つい口を出したくなる夜がありますが、ぐっと堪えます。その沈黙こそが、子供の自立心を育てる「最高のサポート」だと知っているからです。
【まとめ】「信じて待てる親」が、逆襲のステージを作る
結局のところ、晩成型の子が最後に化けるかどうかは、親が「今の未熟さを愛せるか」にかかっています。
• J下部ですら、中1は「種まき」の時期。目先の結果を捨て、知性を蓄えている。
• 身体能力で勝負しない。相手のスピードを無力化する「頭の力」を信じる。
• 親は教官ではなく、最高のサポーター。失敗を許容する「安全地帯」になる。
これら3つの執着を捨てるのは、プロの指導者であり4児の父である私にとっても、決して簡単なことではありません。試合で競り負ける我が子の姿を見て、胸が締め付けられない親なんていないからです。
しかし、私たちが焦って「答え」を与えてしまったら、その子の「逆襲」はそこで止まってしまいます。
今はまだ、芽が出ない時期かもしれません。でも、土の中では確実に根が広がっています。その根を信じて、一緒にじっと待ちませんか?
「どうしてもイライラしてしまう」「具体的にどう声をかけたらいいか分からない」という方へ。
今後、私の15年の経験をベースにした「親御さん向けのオンライン相談」や、子供の「知性」を伸ばす具体的な声かけ集なども準備しています。もし興味がある方は、今のうちにブックマークやXのフォローをしておいてくださいね。